CopyPastehas never been so tasty!

カルマインの忘れ物

by anonymous

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伝説の楽園、カルマの楽園へ続く階段は中々長い。
「デューちゃんは悪魔でござる…」
途方も無く続いていそうな薄汚れ、朽ちかけた階段を降りながらユキが呟く。
苦労の末に冒険家グレッグが見つけるはずの楽園を横から掻っ攫うような形で先乗りしてしまうことに対しての呟きであるが、その悪魔の提案に自分もノっているのだから人のことは言えない。
「にょ。…ユキたん、おっきな荷物、にゃ」
直ぐ後ろを歩くドールがユキの背負う大荷物を見上げてぽつりと呟いた。


一同が何階層も降りているのではないかと疑うほど長い階段にうんざりしてきたころ急に視界が開けた。
「おおー」
誰からとも無く感嘆の声が漏れる。
ドロースピカの力できらきらと輝く湖面と白亜の神殿がドンと視界に入った。
ドローシルフの力で流れる綺麗な空気はそよそよと心地よく木々と芝生を揺らしている。 
カルマの楽園は聞きしに勝る楽園だった。


一番初めに動いたのはユキだった。
「ひゃっほーい!!」
銛とシュノーケルを身に着け、湖へ走り寄るなり飛び込む。
ザバーン!と静かな楽園に大きな音が鳴り響いた。
「おおおっ、す、すげえ!」
アベルも神殿へまっしぐらに駆け出す。
アベルの考古学の探究心が神殿へと彼を引っ張るのだ。
「あ、ちょっと、待って…!」
遅れまいとイブがその後を追う。二人は奥へそびえる神殿へと消えていった。
「元気だねえ…。ま。俺はしばらく自分の背負った業を忘れてのんびり涼むかね」
怒涛のごとく消えていった仲間を見送り、アミンスチカは伸びをしながらゆっくり木陰へと向かうと、ごろりと横になった。
アミンスチカの視界にはバチャバチャと水しぶきを上げながら魚を追い回すユキがかぶるハリボテの馬マスクが見えている。
「…なんで脱げねえんだ」
疑問が浮かんだが、ユキだから、という結論に落ち着いた。
どうにも目立って気になるハリボテから視線を剥がし、浅瀬の方へ目を向けると水遊びをするドール、ドレスの裾を上げて踊るように水と戯れるアリシアが映る。
「水と戯れる女の子はいいですねぇ」
いつのまにかアミンスチカの横に座っているジャンゴが話しかけるが、アミンスチカは生返事だ。
「おう、そうだな…。…ここは下層だが風が吹いてて明るくて過ごしやすいし遺跡もある…ここ観光地にすれば賑わうんじゃね?…いや、だが辺鄙な場所だ。人を集めるには…驢馬か…お、それも商売に…」
「お茶ドゾー」
「おう、サンキュ」
ジャンゴから差し出されたコップをろくに見ずにアミンスチカは一口含み……
「ぶへっ!?んだこれ!?酸っぱ苦渋辛い!」
青紫の液体を吐き出した。
「おお、それそんな味なんですね」
芝生の雑草を煮出しながらジャンゴはニヤニヤと笑っていた。
「にょ?おままごと?楽しそう、にゃ」
「お、ドールだぁ。アンチもジャンゴも何してんの」
ざばざばと湖から上がってきたユキが声をかける。
釣果は無い。あんなに大騒ぎで魚を追えば捕まるものも捕まらないだろう。
「いっぱい、お菓子、持ってきたにょ。皆で食べる、にゃ」
にこにこ笑ってドールがバスケットの蓋を開ける。
キャンディ、ビスケット、パイ…菓子の類がぎっしりと詰まっていた。
「おおー、いいですねぇ。じゃあお茶淹れますよ…ちゃんと普通のお茶を、ね」
ジャンゴがいそいそと荷物から茶葉を出す。
「アベルたんやイブたんも呼ぶ、にゃ」
立ち上がりかけるドールをアミンスチカが止める。
「あーやめとけやめとけ。馬に蹴られるか、リア充の爆発に巻き込まれるぞ」
「…?アベルたん、爆発する、にょ?」


一方こちらは噂のリア充ことアベルとイブ。
アベルは神殿の中を興奮しながら探索していた。
「おお、すげえ!これすっげえぇえ!…あ、この壷、同じようなデザインの図書館で見た!!…うわ、この食器のデザイン斬新~。古すぎて斬新~っ、…ほあー!すげえ、こんなに出来のいいドローノソリン珍しいんじゃね?さすが天才星霊術士が建てただけあるわ…おあ!なんだこの絵!…」
ぴょいぴょいと駒鳥が飛び回るように部屋のあちこちを見て回り、縦横無尽に神殿内を駆け巡るアベル。
「…千切れんばかりに振られている、しっぽがみえる…気がする」
その様子をイブは苦笑しながら見つめている。
アベルが嬉しいのが目に見えて分かるから、イブも嬉しい。
「うん、幸せって、こういうのを言うんだね…」
イブも遺跡は大好きだ。アベルの邪魔にならないように建造物などを観察する。
「面白い、な」
でも、楽園についてからアベルはずっと神殿しか見ていない。
流石にちょっと寂しくなってきた。
イブは立ち上がると、一生懸命石版に書かれている絵文字を解読しようとしているアベルの服の裾を掴む。
「くそー、リード持ちなら読めんのか、これ……全然わか…」
そして、イブは裾をクイクイと引いた。
「ん?…う、あ、ごめん。折角一緒に行動してたのに、先走りすぎた、な」
振り向き、ばつ悪げに頭を掻くアベルにイブは頬を染めて呟く。
「遺跡もいいけど…時々は、私のことも、見て、ほしい、な…」
「ごめんな。じゃあ、一緒に行こうぜ」
こくんと頷くイブの手を取り、アベルは神殿の奥へと歩き出した…。

「…なんだ皆、向こう岸にいるのか」
ひとしきり素足を湖に浸して遊んだアリシアはふと顔を上げて呟いた。
対岸の方でアミンスチカやジャンゴたちが茶会をやっているらしい。
ふん、と息を吐いて、アリシアはくるりとドレスを翻して振り向く。
「デュード。君、そんなところで呆けておらんでこっちまで来てはどうだね?」
アリシアの口調はいつになくご機嫌である。
「へいへいっと」
呼びかけに答え、芝生に座り込んでなにやらしていたデュードは後ろ手になにかを隠しながらアリシアに近寄ってきた。
「?何を持っているのだね」
きょと、と傾げる頭にぽすんと何やら乗せられた。
「む、い、いきなり、なにをっ…」
驚いて水面に映る自分を確認すると頭上に色とりどりの花冠が見える。
アリシアは伏し目がちに
「…に、似合うかね」
と尋ねた。
「ああ、すげえ似合うぜ、俺の姫君」
ニッと笑い臆面も無く言うデュードにアリシアはもごもごと口の中で非難めいたことを呟いて顔を赤らめた。
「ふん、ではお返しだ」
アリシアは湖岸に腰掛けると2輪花を摘む。
そして指輪を作った。片方は自分が嵌め、もう片方を差し出す。
だがデュードはただそれを見下ろしているだけだ。アリシアはムッと顔をしかめた。
「…な、なんだね?その目は。文句があるならつけなくてもよいのだぞ?」
「いやいや、それは順番ちげえじゃん、な?」
アリシアの手をとり、そっと嵌っている指輪を外す。
「こういうのは…俺からあんたに、嵌めるもんじゃね?」
くす、と笑ってデュードはアリシアの耳元に囁いた。


「ああ、やっぱり・・・・・・この世界は、すばらしいな」
うっとりと呟きながら神殿を出てきたアベルの手はしっかりとイブの手と繋がれている。 
「グレッグさんには感謝しないとね、お先に、楽しませてもらったよ」
アベルの呟きにイブが微笑んだ。
「お、リア充どものご帰還だぜ」
「お二人さーん、ドールちゃんのお菓子と私の『普通の』お茶はいかがですかぁ」
茶会のメンバーが二人を呼ぶ。
「おう、じゃあいただくとするかー」
二人は手を繋いだまま一同へ近寄っていった。だが、メンバーが足らない。
「あれ?ドールちゃんは?」
イブが首をかしげた。


ドールはビスケットを持って対岸へ歩いていた。
「やっぱり、せっかく、にゃ。皆に食べてもらわないと、だめにょ。ねえ、サラたん」 
キラキラと妖精が同意するようにドールの頭上を舞う。
「アリシアたんたち、どこか、にょ…?」
ひゅるんとサラが飛び、とある木陰を指差す。
「あ、居たにょ!」
とドールは走り寄りかけ…立ちすくんだ。
ドールの視界には、抱き合い、唇を合わせる二人が映っていた。
「…ずっと、一緒だぞ、デュード…」
ほのかに乱れた吐息交じりのアリシアの囁きが風に乗ってドールの耳に届く。
「お、おおお大人の、大人のキス見ちゃったにょ!にょにょにょ…!」
うろたえて真っ赤になったドールとサラは走り、飛び去った。


一同が散々楽園を遊びつくし、帰っていった後、可哀想な冒険家グレッグはようやく楽園にたどり着いた。
「ついに、ついに見つけたぞ!!カルマの楽え…あれえ!?」
グレッグは、がぼーんと顎を落とす。
「よーやくいらっしゃいましたねー」
「よーう、グレッグの旦那、お疲れさん。ま、茶でも飲めよ」
アリシアが置いていった若干萎れ気味の花冠を被ったジャンゴと、ユキが【ハリボテエレジー 爆誕!!お土産はご自由にお持ち帰り下さい】という看板と共に大量に置いていった馬のハリボテマスクの一つを弄っているアミンスチカがグレッグを待ち構えていた。
隣には【グレッグたんへ】のメモと共にドールが残していったパイのバスケットがある。 
「なっなっなっ」
二の句がつげないグレッグにアミンスチカが近寄って肩を叩いた。
「まぁまぁ」
ジャンゴは青紫の謎の液体をカップに満たしてニヤニヤ笑う。
「お茶でも飲んで。ギッヒヒヒヒヒ」
「なんでええええええええ!!?」
楽園にグレッグの悲しい叫びが響いた…。

 

この度は、偽シナにご参加下さいましてありがとうございました。とてもたのしい楽園行になりました。

参加者様のユキさん、ジャンゴさん、アミンスチカさん、ドールちゃん、アリシアちゃん、イブちゃん、アベルさんに多大なる感謝を!!

Comments

  • デュード背後
    大変申し訳ございません。オープニングを付け忘れていたので、追記させていただきます。
    
    【オープニング】
    
    幾層にも建築を重ねて存在する都市国家アクエリオ。
    下層には数え切れない放置領域がある。
    その領域のどこかに、大昔に天才星霊術士カルマインが造り上げた
    『カルマの楽園』があるという…。
    
    「つ、ついに、ついに見つけたぞ!ここが『カルマの楽園』か!!」
    冒険家グレッグは下層への階段を降りた途端、
    視界に広がった光景に興奮をあらわにした。
    皆はアクエリオの干上がった最下層の洞窟に必死になっているが
    一人頑固にカルマの楽園探しに邁進していた努力が今実ったのだ。
    
    星霊建築の粋を集めた文字通りの楽園がそこにはあった。
    ドローシルフによって絶えず心地よい爽やかな風が吹き、
    ドロースピカにより明るく保たれた空間の真ん中には、
    ドローアクアの力で清水が満々と湛えられた湖がきらきらと光る。
    底まで透き通った湖には魚が遊び、水草が花を咲かせ。
    湖の周りには、瑞々しく美味しそうな果実をたわわに実らせた木、
    芳しい花の香りを漂わせる木など様々な植物が植わっている。
    その奥のドローノソリンとドロージェナスの力で白亜の建材を
    見事に組み上げた神殿には豪華な家具や美しい宝石等が飾られている。
    
    「す、すごい、すごいぞ!大発見だ!!」
    グレッグは興奮冷めやらぬ様子で楽園を隅々まで見ようと駆けだした…。
    
    
    「まさか本当にカルマの楽園があったとはな。
     冒険者も捨てたもんじゃねえ」
    デュードはアクエリオの伝説が本当だったということに驚きを隠せぬまま、一同に見えたエンディングを説明した。
    
    「で!これぞエンドブレイカーの特権だ。
     たまには良いエンディングのおこぼれに預かるのもいいんじゃね?
     グレッグの先回りして楽園で遊ぼうぜ!
     …先に見つけられちまうグレッグは気の毒だが…
     俺に目を見られたのが運の尽きだったな」
    ククク、と悪戯っぽく笑い、デュードは一同を楽園に誘った。
    

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